復職した社員には復職後どこまでフォローが必要?再休職を防ぐフォローアップの進め方を産業医が解説

人事労務Aさん

復職した社員って、すぐに通常勤務に戻させていいんでしょうか?復職後のフォローはどこまでやればいいのか、正直よくわからなくて…

産業医 原

すぐに通常勤務はほぼ無理です。残業禁止などの就業制限をつけながら、月1回の産業医面談で段階的に解除していくのが標準的な進め方です。再休職を防ぐためには、復職後のフォローこそが本番と考えてください。


復職可が出てからが本番:再休職リスクのリアル

復職対応は、メンタル不調だけでなく身体疾患からの復帰も対象になります。腰痛で長期休業した方、がんからの復帰の方など、心身どちらの疾患も同じ枠組みで対応します。

療養を経て、主治医から「復職可能」の診断書を受け取り、会社に提出したあとに復職面談を実施する流れになります。復職面談自体は法律上必須ではありませんが、産業医を契約している会社のほとんどが実施しています。

ここで重要な事実があります。復職判定で「就業制限なし」となるケースはほぼ皆無です。数ヶ月休養していた労働者が、いきなり残業も含めた通常勤務に戻れることは現実的にはほぼありません。「復職可、ただし就業制限あり」がほぼ100%と考えていいでしょう。

なぜここまで慎重に進めるのか。理由は再休職率の高さにあります。

復職後の経過期間再休職率
6ヶ月以内約20%
1年以内約30%
5年以内約50%

さらに重要なのは、1回目の休職期間は平均107日に対し、2回目は平均157日と1.5倍長くなるという実態です(出典:平成28年度 主治医と産業医の連携に関する厚労省研究(アドバンテッジJOURNAL))。再休職を防ぐことは、本人にとっても会社にとっても極めて大きな意味を持ちます。

これが、厚労省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」第5ステップに「職場復帰後のフォローアップ」を位置づけている背景です。

復職後によく行われる就業制限:残業禁止と短時間勤務

復職判定でつけられる就業制限として、最もよく行われるのは以下の2つです。

1. 残業禁止(最頻パターン)

数ヶ月休んだ社員にいきなり残業をさせるのは医学的にも避けるべきで、「定時で帰る」を当面のルールとします。残業なしで業務量も一定範囲に抑えることが、復職直後の基本形です。

2. 短時間勤務(6時間勤務など)

会社に短時間勤務制度がある場合は、6時間勤務からスタートし、徐々に7時間→8時間と勤務時間を伸ばしていく形もあります。このほか、業務内容そのものを軽減するケース(責任ある業務から外す、出張をなくす、難しい顧客対応を外すなど)もあります。

何をどこまで制限するかは、社員の状況・業務内容・会社の制度に応じて産業医が個別に判断します。

フォローアップ面談の標準的な流れ:月1回の産業医面談

復職後のフォローアップ面談は、通常1ヶ月に1回のペースで産業医が実施します。各回の面談で確認するのは以下です。

  • 体調の経過(睡眠・食欲・気分・集中力など)
  • 業務遂行の状況(疲労感の有無、ミスの増減)
  • 残業制限・短時間勤務を解除できるか・継続すべきか

産業医はこれらを総合的に判断し、産業医意見書を会社に提出します。会社はその意見書をもとに、残業時間の管理や勤務時間の調整を行います。

順調なケース:2〜3回で完全解除

経過が順調な場合は、面談2〜3回(復職後2〜3ヶ月)で就業制限を完全に解除できることが多いです。段階的には次のように進めます。

  1. 1回目(復職1ヶ月目):残業ゼロを継続 → 体調確認
  2. 2回目(復職2ヶ月目):問題なければ残業上限15時間から解禁
  3. 3回目(復職3ヶ月目):30時間 → 45時間と段階的に拡大、最終的に制限解除

順調なケースでは、3回目前後で月次フォロー面談も終了となります。

順調にいかないケース:1〜2年と続くフォローも珍しくない

一方で、メンタル不調の場合は体調不良が引き続く方も少なからずいます。

  • 復職後3ヶ月経っても残業制限を解除できない
  • 一度解除したが再度制限を戻すケース
  • 季節変動や繁忙期で体調が揺らぐ

こうした場合、1年・2年と毎月の面談を継続することも珍しくありません。「フォローを終わらせること」を目的にせず、「再休職を防ぐこと」を目的に、必要な期間しっかり伴走するのが産業医の役割です。

再休職した場合に休職期間が1.5倍長くなる実態を踏まえれば、1〜2年のフォローは決して長すぎる投資ではありません。「復職後フォローを2年続けて再休職ゼロ」のほうが、「フォローを早めに切って半年後に再休職」よりも、本人にも会社にも圧倒的にメリットがあります。

産業医・保健師・上司による多層的サポート

再休職を防ぐためには、産業医面談だけでなく多職種による多層的なサポート体制が欠かせません。

保健師による日常的ケア

会社に保健師がいる場合は、産業医面談とは別に保健師による日常的な声かけ・相談対応を行うのが一般的です。月1回の産業医面談の合間を保健師が埋めることで、よりきめ細やかなフォローが可能になります。

主治医との連携

復職後の経過については、産業医から主治医への情報提供・確認を行うこともあります。「会社での働きぶりはこうです」「残業をここまで戻しても大丈夫そうです」と医療側にフィードバックすることで、治療側の判断材料にもなります。

上司による日頃のフォローが鍵

最も大事と言ってもいいのが、上司の日頃のフォローが復職後の安定を大きく左右するという点です。

  • 日々の仕事ぶり・体調の変化を一番近くで見ているのは上司
  • 業務量の調整・声かけ・相談しやすい雰囲気作り
  • 産業医面談時に上司から得た情報を共有することで、より的確な判断が可能になる

上司に「復職した社員にどう接すればいいか」を産業医・人事から事前にレクチャーしておくのも有効です。上司と産業医の情報共有については、産業医にどこまで社内情報を共有していい?個人情報・人事情報の伝え方を実務目線で解説もあわせてご覧ください。

まとめ:再休職予防は「復職時より復職後」が勝負

  • 復職判定ではほぼ100%就業制限がつく(残業禁止が最多パターン)
  • 月1回の産業医面談で段階的に就業制限を解除していく
  • 順調なら2〜3回で完全解除、不調なら1〜2年続くことも珍しくない
  • 再休職すると休職期間は1.5倍長くなる(平均107日→157日)傾向がある
  • 産業医・保健師・主治医・上司による多層サポートで再休職を予防する

数字が示すように、復職後5年以内で約半数が再休職している現状では、フォローアップを軽視することは経営リスクそのものです。逆に、丁寧なフォローを続ければ社員の戦力化と定着につながり、長期的に大きな成果を生みます。

復職プロセス全体の進め方については、復職を希望する社員を会社が止めることはできる?産業医の役割と実務対応を解説もあわせてご参照ください。


よくある質問


本人が「もう配慮はいりません」と言った場合、会社は通常勤務に戻してよいですか?

本人の希望だけで判断せず、産業医の意見を確認してから段階的に戻す方が安全です。

特にメンタル不調の場合、「頑張りすぎる・疲労を隠す・無理して戻る」ことで再休職につながるケースがあります。

本人の意欲は尊重しつつも、産業医面談で体調・睡眠・業務負荷を確認したうえで判断することが重要です。


復職後に上司が気をつけるべき声かけはありますか?

「大丈夫?」だけで終わらせず、仕事の負荷を具体的に確認する声かけが有効です。

「今の業務量は多すぎないか」「期限に追われていないか」「睡眠に影響していないか」「困っている作業はないか」のように、仕事に紐づけて確認すると本人も答えやすくなります。

また「無理しないで」だけでなく、「今月はここまででよい」「この業務は外す」など、具体的な調整を示すことも大切です。

投稿者プロフィール

原 達彦
原 達彦原産業医事務所 代表産業医
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「原産業医事務所・梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)

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