精神科のカウンセリングは保険がきく?自費との違いを産業医が解説

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人事労務Aさん

メンタル不調の社員にカウンセリングを勧めたいのですが、精神科のカウンセリングは保険がきくのでしょうか?

産業医 原

実は、原則は自費なんです。ただ2026年6月から、保険で受けられる枠が広がりました。病院によって違うので、確認のしかたまでお話ししますね。


精神科のカウンセリングは、原則「自費」です

社員から「カウンセリングを受けたい」と相談されたとき、意外と知られていないのが「精神科のカウンセリングは、原則として保険がきかない」という事実です。この記事では、自費のカウンセリングと保険で受けられるカウンセリングの違いに絞って解説します。

心理士(公認心理師・臨床心理士)が行うカウンセリングそのものには、原則として健康保険が適用されません。多くの医療機関では自費で、相場は50分あたり3,000円〜10,000円程度です。

保険がきくのは「医師が診る部分」です。精神科医の診察(通院精神療法)と、医師の指示で行う心理検査には保険が使えます。一方、心理士が時間をかけて話を聴くカウンセリングは診察とは別枠で、自費になるのが基本です。

「カウンセリングを行っています」とホームページに書いてある病院でも、自費であることが普通です。ここが最初のポイントになります。


2026年6月から、保険で受けられる枠が広がりました

公認心理師によるカウンセリングを保険で受けられる枠は、現在2つあります。枠②の心理支援加算は2024年6月に心的外傷のある方向けに新設され、2026年6月の改定で対象が神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害へ広がりました(250点→280点)。職場のストレスで多い適応障害が保険の対象に入ったのは、この2026年6月からです。枠①の認知行動療法の枠は、2026年6月の新設です。

枠① 認知行動療法(公認心理師による心理支援)枠② 心理支援加算
主な対象うつ病などの気分障害、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、PTSD、神経性過食症、不眠症神経症性障害、ストレス関連障害(適応障害を含む)、身体表現性障害
回数の目安一連の治療で16回まで(不眠症は8回)月2回まで・初回から2年以内
1回あたりの点数330点(3割負担で約1,000円)+診察料280点(3割負担で約840円)+診察料
条件30分以上・対面30分以上・対面・精神科医の指示

どちらも医師の診察とセットで受けるもので、対面が条件です(オンラインでは受けられません)。カウンセリング部分は3割負担で1,000円前後。これに診察料が加わるので、1回の窓口負担はおおむね1,200〜2,000円が目安です。自費なら1回数千円〜1万円かかることを考えると、この差はかなり大きいと言えます。

(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(精神医療)」、同「令和8年度診療報酬改定 個別改定項目」。参考:公認心理師試験研修センター掲載の関係通知抜粋)


ただし「どの病院でも受けられる」わけではありません

この2つの枠は、医療機関が施設基準の届出をして初めて使えます。届出には、公認心理師の勤務経験や、常勤の精神科医の配置といった条件があります。また、保険の枠を使えるのは国家資格の公認心理師だけで、臨床心理士(民間資格)のみの心理士では使えません。

つまり、保険でカウンセリングを受けられるかどうかは病院によります。しかも、ホームページに保険か自費かを書いていない病院が大半です。「カウンセリングあり」と書かれていても、実際は自費ということがよくあります。

この点を知らずに社員に勧めると、「行ってみたら1回8,000円だった」というすれ違いが起きてしまいます。


社員に勧める前に、電話で確認したい4つのこと

次の4点は、電話で聞けば分かることです。本人が問い合わせるのが難しければ、人事担当者が「社員に紹介したいので」と確認しても構いません。その際、社員の名前や症状は出さず、制度と料金だけを聞くようにしてください。

  1. 公認心理師のカウンセリングを保険で受けられるか(認知行動療法か、心理支援加算か)
  2. 自費の場合、1回いくらで何分か
  3. 心理士がいる曜日
  4. 初診からカウンセリングを受けられるまで、何回・何週間かかるか

この4つが分かっていれば、社員に「ここなら保険で受けられる可能性があり、月2回、1回1,200〜2,000円程度で通えそう」と具体的に伝えられます。保険になるかどうかは診察した医師の判断なので、「可能性がある病院」として伝えるのがポイントです。


まとめ:カウンセリングは「保険か自費か」を先に確認する

  • 精神科のカウンセリングは原則自費(相場は50分3,000円〜10,000円)
  • 保険がきくのは医師の診察と、医師の指示による心理検査
  • 公認心理師のカウンセリングを保険で受けられる枠は2つ。心理支援加算(2024年新設・2026年6月から適応障害なども対象に・280点)と、認知行動療法の公認心理師枠(2026年6月新設・330点)。カウンセリング部分は3割で1,000円前後、診察料込みで1回1,200〜2,000円が目安
  • ただし届出をした病院に限られ、ホームページに書いていないことが多い
  • 社員に勧める前に、保険か自費か・料金・曜日・初回までの期間を電話で確認する

メンタル不調の社員への初期対応は → メンタル不調かな?と感じたときの相談先はこころの耳|無料電話窓口の使い方から産業医の役割まで解説 もあわせてご覧ください。

産業医に相談できる範囲については → 休職対応やメンタル不調で産業医に相談できる内容はどこまで? で解説しています。

※ 診療報酬の点数や要件は改定で変わります。この記事は2026年9月時点の情報です。実際に保険が適用されるかは、各医療機関の届出状況と医師の判断によります。


よくある質問


会社が受診先の病院を指定してもよいのですか?

受診先を決めるのは本人です。会社ができるのは情報提供までなので、複数の選択肢を伝えて本人が選べるようにするのが基本です。


カウンセリングの費用を会社が補助することはできますか?

福利厚生として補助している会社もあります。EAP(従業員支援プログラム)を契約していれば、そこで無料のカウンセリングを受けられる場合もあるので、まず自社の制度を確認してみてください。


産業医の面談は、カウンセリングの代わりになりますか?

産業医面談は就業上の配慮を判断するためのもので、治療としてのカウンセリングとは目的が違います。ただ、産業医が状態を聞き取ったうえで医療機関への受診を勧める、という橋渡しはできます。

投稿者プロフィール

原 達彦
原 達彦原産業医事務所 代表産業医
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「原産業医事務所・梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)

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