50人未満の事業場でもストレスチェックは必要?2028年義務化に向けて今から準備すべきことを解説

人事労務Aさん

従業員が50人未満の会社でも、ストレスチェックは義務になるのでしょうか?

産業医 原

はい、2025年5月の法改正で50人未満の事業場にも義務化が決まりました。最長2028年5月までの施行予定です。今から準備をしておくことをお勧めします。


そもそもストレスチェックとは?何を測る検査か

ストレスチェックとは、労働者のストレスの状態を測るための検査です。健康診断が身体の健康状態を確認するのに対して、ストレスチェックは「心の健康診断」と位置づけられています。

検査には、厚生労働省が標準で推奨する職業性ストレス簡易調査票(57項目版)が使われ、以下の3つの領域を測定します。

領域内容
A:仕事のストレス要因仕事の量や質、人間関係など、ストレスの原因となる職場環境
B:心身のストレス反応イライラ・疲労感・不眠など、ストレスによって出ている心身の症状
C:周囲のサポート上司・同僚・家族からのサポートが得られているか

この制度は、2015年12月施行の改正労働安全衛生法従業員50人以上の事業場の事業者に義務化されました。健康診断と同じく「心のチェックも必要」という考え方が法律に取り込まれた流れです。


高ストレス者の判定と医師面談の流れ

ストレスチェックは、義務化されているのは事業者側であり、労働者本人には受検義務はありません。ただし、会社は受検勧奨を行う立場にあるため、未受検の社員には複数回の案内が行われるのが通常です。

検査結果は、以下の基準で「高ストレス者」が判定されます(厚生労働省 実施マニュアルより)。

  • 領域B(心身のストレス反応)の合計点が77点以上
  • もしくは、領域Bが63点以上 かつ 領域A+Cの合計が76点以上(合わせ技)

高ストレス者と判定された人が本人の希望で申し出れば、会社は産業医(医師)による面談機会を提供しなければなりません。これも事業者の義務です。労働者は希望制ですが、会社側は「希望があったら必ず提供できる体制」を整えておく必要があります。


2028年から50人未満の事業場にも義務化される

2025年5月、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が公布され、これまで努力義務にとどまっていた50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されることが正式に決まりました。

厚生労働省の公式ページでも「2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務化されました」と明記されています。

施行は「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、最長で2028年5月まで。厚生労働省は施行に先立ち2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」を公表し、50人未満の事業場の準備支援に動き出しています。

詳細な運用ルールは今後の政令・通達で順次明らかになっていきますが、基本的には50人以上の事業場と同じ運営が求められると考えておくのが安全です。


50人未満の会社が今から準備すべき2つのこと

施行までまだ時間はありますが、準備に着手しておくべきことが2つあります。

1. ストレスチェック実施業者の確保

ストレスチェックは、自社内で実施(内製化)するか、外部業者に委託するかのいずれかになります。

多くの中小企業では、社内に有資格者(医師・保健師など)が常駐しておらず、医療関係者ではない実施事務従事者が制度やシステムを整備するなども可能ですが、ゼロから作り上げることは労力がかかることから困難なことがほとんどです。

現状外部委託が現実的な選択肢です。

施行が近づくと外部業者の予約が集中することが予想されるため、信頼できる委託先を早めにリサーチしておくことをお勧めします。

2. 産業医(医師面談用)の確保

もう一つ重要なのが、高ストレス者から面談希望が出た際に対応してくれる産業医の確保です。面談機会の提供は会社の義務であり、その医師の手配と費用負担は会社側になります。

ストレスチェックの実施業者と産業医はセットで用意しておく必要があります。50人未満の事業場では産業医の選任義務はありませんが、嘱託産業医として契約しておくと費用面でも実務面でもスムーズです


産業医による面談の手配方法と費用感

高ストレス者面談を実施する方法は、大きく2つあります。

無料の選択肢:地域産業保健センター

各都道府県に設置されている地域産業保健センターは、50人未満の事業場を対象に無料で産業保健サービスを提供しています。現状でも高ストレス者面談を依頼することは可能で、今後の法令化に向けて担当医師が増員される可能性も高いと思われます。

ただし、現時点では担当できる医師の数がそこまで多くなく、面談実施までに時間がかかるケースがあります。「希望があったらすぐに面談を実施したい」というニーズには対応しきれない場面もあるため、緊急時の備えとしては不安が残ります。

外部の産業医事務所への委託

迅速・確実に面談を実施したい場合は、外部の産業医事務所と契約しておく方法がスムーズです。弊所(原産業医事務所)の費用例は以下のとおりです。

形式費用(1名・1時間)
対面面談35,000円
オンライン面談30,000円
複数名の同時実施1名あたりの単価が逓減

頻度や対象人数に応じてプランを設計できますので、自社の規模感に合わせた使い方が可能です。

産業医との契約の流れについては → 産業医の契約から稼働まで、どのくらいかかる?期間の目安と準備のポイントを解説 もあわせてご覧ください。


まとめ

  • ストレスチェックは2015年から従業員50人以上の事業場に義務化されている
  • 2025年5月公布の改正法(令和7年法律第33号)により、50人未満にも義務化が決定
  • 施行は最長2028年5月まで。厚生労働省はすでに小規模事業場向けマニュアルを公表済み
  • 今から準備すべきことは「実施業者の確保」と「面談対応の産業医の確保」の2点
  • 地域産業保健センター(無料)か外部産業医事務所(有料・即応性が高い)を検討する

我々産業医事務所も実施者の立場として最新情報を注視していきます。新しい動きがあるたびに本ブログでお伝えしていきますので、動向をこまめにチェックいただければと思います。

「うちは50人未満だけど、何から始めればいい?」「実施業者と産業医をまとめてお願いできる?」といったご相談は、お気軽にお問い合わせください。


よくある質問


ストレスチェックは外部委託しないといけませんか?社内でもできますか?

自社で内製化も可能です。「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」をご参照ください。

しかし内部でシステムを構築し、精度を運用するのは労力がかかります。

2026年5月現在でもそこまで料金が高いものではありませんので外部委託にお願いする方が効率がいいことがほとんどです。

弊社にご相談いただければ運営会社をご紹介いたします。


50人未満でも産業医と契約しておいた方がいいですか?

義務ではありませんが、義務化後に高ストレス者面談の対応を迅速に行うために、事前に嘱託産業医と契約しておくことをお勧めします。面談ニーズが発生してから探し始めると、対応できる医師がすぐに見つからないケースもあります。月1時間程度の契約から始める小規模プランもありますのでお気軽にご相談ください。


ストレスチェックの実施頻度・時期はどのくらいが一般的ですか?

法令上は年1回以上の実施が義務とされています。

時期に定めはありませんが、多くの企業では健康診断の時期にあわせて実施しているケースが多いです(秋〜冬の実施が一般的)。

結果通知から高ストレス者面談まで一連の流れをスムーズに進めるためには、スケジュールに余裕を持って計画することが重要です。

投稿者プロフィール

原 達彦
原 達彦原産業医事務所 代表産業医
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「原産業医事務所・梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)

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