従業員50人未満なら安全衛生委員会は不要?設置義務のルールを解説

「うちは従業員が30人くらいの会社だけど、安全衛生委員会は設置しなければならないの?」

人事担当者や経営者様から、このようなご相談をよくいただきます。

労働安全衛生法は複雑で、事業場の規模(人数)によってやるべきことが細かく変わるため、迷ってしまうのも無理はありません。

ずばり、従業員数50人未満の事業場には、安全衛生委員会の設置義務はありません。

だからといって安全衛生について何もしなくていいことにはなりません。

本記事では、50人未満の事業場が守るべきルールと、小規模事業場が押さえておきたいポイントについて解説します。


結論:50人未満の事業場に「安全衛生委員会」の設置義務はない

労働安全衛生法では、安全衛生委員会(安全委員会・衛生委員会)の設置義務が発生する基準を「常時使用する労働者が50人以上の事業場」と定めています。

したがって現在の従業員数が49人以下であれば、委員会を設置する必要はありませんし、毎月の議事録作成なども不要です。

ただし、注意していただきたいのが、人数のカウント方法です。

この「50人」には、正社員だけでなく、パートタイマー・アルバイト・契約社員も含まれます

正社員は30人、パート20人という場合は、合わせて50人になるので設置義務の対象となります。

知らず知らずのうちに法令違反にならないよう、雇用形態に関わらず「常時働いている人数」を確認してください。


50人未満の事業場に義務付けられている安全衛生体制

「委員会を作らなくていいなら、担当者も決めなくていいのでは?」と思われるかもしれませんが、そうはなりません。

50人未満の事業場には、委員会の代わりに以下の体制整備が義務付けられています。

10人以上50人未満なら「推進者」が必要

従業員数が10人以上50人未満の事業場では、以下のいずれかの担当者を選任し、就業場所に氏名を掲示する義務があります。

  • 安全衛生推進者(安全・衛生の両方が必要な業種:建設業、製造業、運送業など)
  • 衛生推進者(衛生のみで良い業種:IT、小売、飲食、サービス業など)

推進者は、いわば小規模事業場における衛生管理者のような存在です。

施設や設備の点検、健康診断の実施確認、労働災害の原因調査など職場の安全衛生に関する実務を担当します。

衛生管理者のように国家資格は必須ではありませんが、「大学・高校等で関連科目を修めて卒業した者」や「一定期間の実務経験がある者」、または「都道府県労働局長の登録を受けた講習を修了した者」といった要件があります。

従業員への「意見聴取」の機会を作る

安全衛生委員会がない50人未満の事業場であっても、会社側は「安全衛生に関して関係労働者の意見を聴く機会」を設けなければならないとされています。

これを安全衛生懇親会といいます。

(関係労働者の意見の聴取)
第二十三条の二 委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。

出典:e-GOV|労働安全衛生規則

具体的には以下のような方法で機会を作ります。

  • 朝礼やミーティングの際に、安全や健康について意見を聞く時間を設ける
  • 社内アンケートを実施する
  • 意見箱を設置し、いつでも要望を出せるようにする

50人未満でも実施すべき3つの安全衛生対策

50人未満の事業場で実施しておきたい安全衛生対策をお伝えします。

①定期健康診断と事後措置(義務)

健康診断は、従業員が1人でもいれば実施義務があります(年1回)。

健康診断の結果、異常が見つかれば医師の意見を聞かなければなりません。

50人未満で産業医がいない場合、地域の医療機関や後述するサポートセンターを活用して対応する方法があります。

(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第六十六条の四 事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。

出典:e-GOV|労働安全衛生法

②ストレスチェックの実施(現時点では推奨)

現在、従業員50人未満の事業場においてストレスチェックは努力義務です。

しかし、メンタルヘルスの不調は企業規模に関わらず発生するものです。

むしろ少人数の職場ほど人間関係のトラブルが深刻化しやすいとも言われています。

法改正により、2028年(令和10年)5月までには、50人未満の事業場を含むすべての企業でストレスチェック実施の義務化が決定しています。

③「地域産業保健センター」などの活用

50人未満の事業場には産業医の選任義務がありませんが、従業員の健康問題で医師の判断が必要になることがあります。

そんな時は、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する「地域産業保健センター(地さんぽ)」が活用できます。

  • 長時間労働者への面接指導
  • 健診結果に対する医師の意見聴取
  • メンタルヘルス相談

これらを原則無料で利用できます。


まとめ

従業員50人未満の事業場には安全衛生委員会の設置義務はありませんが、それに代わる体制整備が法律で義務付けられています。

特に10人以上の規模では「安全衛生推進者(または衛生推進者)」の選任が必要になります。

人数に関わらず現場の意見を聴く機会を設けることは、企業としての責務です。

小規模な職場ほど、従業員一人の休職や離職は経営に深刻なダメージを与えます。

産業医の選任義務がない段階であっても医師としての専門的な知見を借りれば、職場環境の改善やリスク管理において大きなプラスになるでしょう。

産業医の導入を迷っているのなら、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

原 達彦
原 達彦原産業医事務所 代表産業医
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「原産業医事務所・梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか

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