産業医との契約書はどこに注意すればいい?|企業向けに実務ポイントを解説

産業医の先生が見つかり契約書を作成することになりました。
作成に当たり、どこに注意すればよいですか?

業務内容・訪問頻度・費用・契約期間・解約条件を具体的に
明記するのですが、産業医が来なかった場合などの料金の支払いの有無など
細部を記載する様々な工夫が必要です。
以下の記事で詳細を説明いたします。
まず前提:契約書は企業側で最終確認する
まず大前提として、
👉 契約書は企業側で内容を確認・調整して発行していただくことがお勧めです。
一般的には、
- 産業医側
- 産業医事務所
- 紹介会社
がひな形を持っています。
そのひな形をベースに、
- 自社に必要な内容を追加
- 不要な内容を削除
したうえで、企業側が納得した形に整えていきます。
その後、
- 紙で2通作成して押印・郵送
- クラウドサインなどで電子契約
といった通常の契約書のルールで締結するのが一般的です。
第1条:業務内容は「具体性」が重要
契約書の中で最も重要なのが業務内容です。
通常は、
- 労働安全衛生規則第13条・第14条・第15条
に基づく産業医業務を行う、といった記載が入ります。
ただし実務ではそれだけでは不十分で、
- 健康管理体制の構築
- BCP(災害時対応)
- 健康管理システムへの助言
など、法令を超えた業務を行うことも想定されます。そのような場合必要に応じて記載します。
👉 実際に何をやるのかを明確にしておくことが重要です。以下参考例です。
- 統括管理:労働衛生管理体制の整備、労働衛生管理計画の策定、安全衛生委員会への参画、衛生関係情報の管理、職場巡視、健康障害の原因調査分析、行政対応、健康管理システムの構築及び整備、危機管理、CSR対応等。
- 健康管理:健診結果に基づく措置、疾病管理、防疫管理、健康保持増進、健康相談、メンタルヘルスケア、管理監督者への報告、過重労働者への面談、復職診断及び適正配置、ストレスチェック関連業務。
- 作業管理:過重労働防止のための労働時間管理、VDT健康障害の防止等。
- 作業環境管理:一般環境衛生、快適職場形成等。
- 労働衛生教育:法定の各種衛生教育、健康教育等。
第2条:対象となる事業所を明確にする
次に重要なのが、
👉 どの事業所を対象とするか
です。
- 本社のみなのか
- 支店も含むのか
- 複数拠点があるのか
これを住所付きで明確に記載します。
第3条:産業医の氏名を明記する
ここでは、
👉 実際に担当する産業医の名前を記載します。
「誰が担当するのか」を明確にすることできます。複数人の産業医で対応する場合も記載します。
第4条:訪問頻度・時間とトラブル回避
訪問回数・時間は実務上かなり重要です。
例えば、
- 月1回
- 第3月曜日15時から何時間実施
といった形で具体的に決めます。
きっちり時間までとするのか、活動が終わり次第終了とするのかも協議の上記載します。
さらに重要なのが、
👉 実施できなかった場合の取り扱い
です。
- 産業医側の都合で実施できない場合 → 振替
- 企業側の都合で実施できない場合 → どう扱うか
- 振替できない場合 → 費用は発生するか
また、
- 感染症(コロナなど)
- 地震などの災害
といった不可抗力の場合は、
👉 「協議の上決定する」といった記載を入れることが多いです。
さらに最近では、
👉 オンライン面談の実施可否も明記しておくと安心です。
第5条:契約期間と自動更新
契約期間は、
- 1年間
- 自動更新
という形が一般的です。
ここで確認すべきなのは、
👉 解約のタイミングと予告期間
です。
2か月前にすることが一般的です。
第7条:事故・災害時の取り扱い
産業医が活動中に事故が起きた場合の取り扱いも重要です。
例えば、
- 職場巡視中のけが
- 通勤中の事故
などです。
一般的には、
👉 企業側が負担する形でかかれます。
第8条:費用と請求方法
費用については、
- 月額基本料
- 訪問ごとの費用
- 延長料金
- 交通費
などを明確に記載します。
月額基本料は0円であったり、3万円など個別に決められることがあります。
これを設定すると、産業医業務がない時も料金が発生することとなります。
また、
- 請求書の発行タイミング
(例:翌月末までに発行)
も決めておきます。
👉 「何にいくらかかるのか」を曖昧にしないことが重要です。
第10条:健康データの取り扱い(重要)
産業医業務では、
- 健康診断結果
- 面談情報
などの個人情報を扱います。
そのため、
👉 守秘義務の記載は必須です。
一方で、
- 企業の健康改善
- 学会発表や研究
に利用する可能性について記載されることもあります。
この点については、
👉 企業として許容できるかどうかを必ず確認してください。
不要であれば削除することも可能です。
よくある失敗:曖昧な契約のまま進めてしまう
実務でよくあるのが、
- 業務内容が曖昧
- 面談範囲、健康診断を確認、判定する範囲が不明確
- 活動延長など追加対応の費用が未定
- 活動が行われなかった時の費用負担はどうなるか?
といった状態で契約してしまうケースです。
その結果、
👉 その都度協議をするなど、お互いの時間と不要なストレスを生み出すこととなります。
まとめ
本記事では、弊社で実際に活用している産業医契約書のひな形をもとに、注意すべきポイントをご説明しました。
契約書は形式的なものに見えますが、実際の産業医活動の内容やトラブル回避に直結する重要なものです。
業務内容・訪問頻度・費用・契約期間・解約条件などを曖昧にせず、事前にしっかり整理しておくことが大切です。
なお、本記事でご紹介した契約書のひな形にご興味のある企業様や産業医の先生は、
コメント欄に「契約書欲しい」と記載のうえ、メールアドレスをご記入ください。匿名でも問題ございません。メールにて契約書データをお送りいたします。
また、ご不明点や個別のご相談があれば、あわせてコメント欄よりお気軽にご質問ください。
よくある質問(Q&A)
紹介会社経由で契約する場合、気をつけるポイントはありますか?
契約の主体と実際の業務提供者が誰なのかを明確にすることが重要です。
紹介会社が入る場合、
- 契約相手は誰か
- 実際に来る産業医は誰か
👉 産業医が行うことと、紹介会社が実施することを分けて記載が必要です。
産業医との契約で「形だけ」にならないためには、どこを見ればいいですか?
業務内容が具体的に書かれているかと、実際の関与頻度を明記すること重要です。
産業医契約でよくあるのが「名前だけいる状態」です。
月1回の安全衛生委員会への参加や職場巡視を2か月に1回等記載しましょう。
👉 “実際に何をしてくれるか”が見える契約になっているかがポイントです。
投稿者プロフィール

- 原産業医事務所 代表産業医
- 【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「原産業医事務所・梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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